fc2ブログ

FC2カウンター

FC2オンラインカウンター

現在の閲覧者数:

プロフィール

くまったさん

Author:くまったさん
ニートで専業主婦(仮)です。好きなものはリラックマとくまもん。
レイアースのフェ風にド嵌り中。
グラビテーション(瑛愁)
っポイ!(平雛)も再燃中。
スレイヤーズのゼルアメにもド嵌り中。

カテゴリ

月別アーカイブ

最新記事

最新トラックバック

最新コメント

メールフォーム

ご連絡ありましたら、 こちらへどうぞ。

名前:
メール:
件名:
本文:

検索フォーム

RSSリンクの表示

リンク

ブロとも申請フォーム

QRコード

QR

『ここからきみと』

3児の母様が、くまったのイラストで書いてくれたフェ風小説です☆
以前載せたのは鉛筆描きだったので、ペン入れして色つけてみました。
3児の母様のサイト「風を感じて~公開版~」でも読むことができますよ。

3児の母様、こちらのカラー版もよければ貰ってください^^

続きからどうぞ。 『ここからきみと』


 
王子と呼ばれる彼は、仕事が煮詰まると、部屋を抜け出し、城内で一二の高さの木に登る。逃げ出すなら、いつも違う場所にしなければすぐに見つかってしまうというのに、いつもそこにいるのは、セフィーロの遠くまで眺めることができるから。そこで皆で作る美しいセフィーロの景色をしばらく眺め、気持ちを新たにして仕事に戻る。
居場所が分かっていたところで、彼を連れ戻すことはなかなか難しい。身の軽い彼は、木の頂上近く、もうそれ以上は自重で枝が折れかねないほど先まで登る。この高い梢まで上がってこれるだけの体力があっても、彼より体重が重ければ、数段下の枝までしかたどり着けない。枝を折ることのない軽い者では、ここまで上がるだけの体力がない。空を飛ぶ聖獣を操り、同じ高さまでたどり着いたところで、木の枝の茂みに阻まれ、触れることは出来ない。
誰にも煩わされない場所で彼は一人何を思うのか。

ヒカル、ウミ、フウの三人がセフィーロを訪れたある日、広間での出迎えに珍しくフェリオがいなかった。
「時間はご存じだろうが、少し前に部屋を抜け出されていてな。」
フウはそれだけで彼の居場所を察した。以前に抜け出したフェリオを捕まえられなかった話を聞いた折、その木のことも聞いていた。
「わたくしが呼んできますわ。」
フウはニコッと笑むと広間を後にした。

その大木は地面にしっかりと根をはり、そびえていた。真下から上を眺めても高すぎて、フェリオの姿を確認できない。けれど、フウは彼がここにいることを確信していた。
ここへ来るときは隠れていないと言いたげに、根本に放り出された王子の白いマント。
クスッとフウは笑うと、それを拾い上げ、軽く振って草を払った後、たたみ、そっと置いた。
ここから声を掛けても、遠くて聞こえないかもしれない。女だからと言うのも癪だけれど、こんな高い木の木登りなどとても出来ない。

フウは息を吸い、魔法を唱えた。
「戒めの風」
くるくると渦を巻く風は、フウの足下に、樽のような形に収束する。渦の形が安定してくると、フウはその上にそっと腰掛けた。
渦を巻いた風は崩れず、椅子のようにフウを支えた。手応えを確認すると、フウは右手をゆっくり上げ、空を指す。渦を巻く風で出来た椅子はすうっと浮かび上がり、枝を縫ってフウを大木の高い梢へ運び上げた。

幹も細く、張り出す枝も頼りなげになってきたところでフウは頭上を見上げた。マントも甲冑もない軽装のフェリオが枝の間に見えた。
フウは脅かさないよう、そっと声を掛けた。
「フェリオ?」
急に声を掛けられ、ぎょっとして声のする方を見下ろしたフェリオだったが、よほど木の上に慣れているのかバランスを失う様子はなかった。
フェリオに危ないことは無かったことに安堵し、フウは風の椅子に腰掛けたまま、枝を縫って彼のところまで上がっていった。
「よくここが分かったな。それにそれはなんだ?」
ふわりと近づきつつあるフウに、フェリオは首をかしげて尋ねた。
「戒めの風を応用したのですわ。こんな高い場所までわたくしは登ってこられませんもの。」
ヒュウと口笛を吹き、フェリオは感嘆した。
「癒しの風といい、フウの魔法は便利だよな。」
ふわふわと昇りながら、クスッとフウは笑んだ。

もう少しでフェリオの横に並ぶ、その一瞬、強い風が吹いた。突風と言うほどでは無かったが、フウの風の魔法の椅子を揺らした。
「きゃ・・・」
フェリオは慌てて右手で近くの枝を掴み、左手でフウの肩を抱き込んで、バランスを崩しかけた彼女を引き寄せ支えた。
「ふぅ・・・焦ったぜ。」
「ありがとうございます。」
フウの笑みにフェリオは頬を赤らめた。照れを隠し、ぶっきらぼうに言う。
「無茶するな」
肩を抱く彼の硬い筋肉質の腕や大きな手のひらを意識して風の鼓動が早まる。
フウも時折素直になれない。頬を少し膨らませて拗ねたそぶりをみせる。
「フェリオがこんなところにいらっしゃるからですわ。」
さすがにこの高さは怖かったのか、回した腕に添えられたフウの手に込められた力はなかなか緩まない。

ここからみきと-挿絵1

「そうだな、悪かった。」
素直に謝り、フウの髪に頬を寄せた。
「フウはどうしてここに?いくら下から遠いって言ったって、呼べばちゃんと聞こえるぞ?」

フウはフェリオの腰掛ける枝の高さに合うように、戒めの風で作った椅子のバランスを取り直した。
「一度、フェリオと同じものを見てみたかったのです。」
「そうか。」
フェリオは視線を前に向けた。フウも彼に倣い前を見た。枝の間にセフィーロの青い空、緑の木々の生い茂る森、空に浮かぶ山、遠く遠くに青い海が望める。
「フェリオこそ、なぜここに?お一人になりたいなら、他にも場所はあるでしょうに。」
仕事を抜け出してはここにいる。誰も伴わず一人で。皆、フェリオがここへ来るのは、仕事に追われ、一人になりたいからだと思っていた。

「姉上の願いが叶っているってことを確認してるんだ。」
一度崩壊したセフィーロであるのに、しだいに取り戻していく大地や自然は、以前のセフィーロの面影を残している。青い空も、緑の森も、空に浮かぶ山も、穏やかな気候も、柱であったエメロード姫が大切に慈しんだセフィーロの姿と変わらない。
「セフィーロの皆さんがエメロード姫の願いを、本当の願いを叶えているのですね。」
ザガートへの想いを断ち切れないのと同じだけ強く、エメロード姫はセフィーロの存続を願っていたことは間違いない。その想いを、セフィーロの民が皆で繋いでゆく。
「ああ・・・俺も、その想いを叶える力になる一人なんだと、いつもここで確認するんだ。」
機転と柔軟性を備え、人当たりよく「王子」業をこなしていても、どうしても過大にかかる「柱の弟」という血筋への期待。その重しをはねのけるためにあえて、地位も何もなく支える者の一人だと感じるためにここへ来るのだろうか。
「わたくしも居りますわ。」
自分もエメロード姫の願いを叶えてセフィーロを支えているものの一人であると言ったつもりだった。
「そうだな、フウが傍らにいてくれるから、折れずにやってこれたんだ。」
まだ抱き込まれたままの腕の中、彼の優しいまなざしにそっと目を伏せ、彼の唇を受け入れた。

fin


スポンサーサイト




コメント

NoTitle

掲載ありがとうございます。

カラーも素敵です!
お言葉に甘えて、頂いてまいりますね。

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

 BLOG TOP